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礼拝説教要約(2017312日)

「家に満ちた香り」       聖書・ヨハネ福音書1218

 皆さんは、香り、匂いにどれだけ関心を持っておられるでしょうか。残念ながら私は、日常はあまり意識しないで生活しています。でもある時、口臭、体臭が気になることがあります。他人の口臭が気になると、自分ももしかしていやな口臭を出しているのではないかと不安になるのです。口臭は自分では気付き難い。でもデーターによると80%という、多くの人が口臭は気になるということです。であるにもかかわらず、他人の口臭を「臭いよ」とか「口臭、気をつけた方が良いよ」と注意してくれる人のパーセンテージは、極低いようです。なぜなら、大部分の人が、注意してくれた人に好感をもてないとのデーターがあるそうです。私も人と接し、話をする働きであるだけに、気をつけねばと思います。でも日本人は元来、香りに敏感な民族なのです。豪胆に思える武士でも、戦いに行く時には兜に香を炊き込めて出陣したと言われています。戦いに破れ、死んだ時の香りまで、昔の人は気配りしていたのですね。

 さて、今日の聖書箇所は家の香りです。

 イエス様がエルサレムに来るたびに立ち寄った家がありました。ベタニア村の愛する3兄弟の家です。姉のマルタは働き者で世話好き。妹のマリアはイエス様の話を一言も聞き漏らすまいと、間近で耳を傾ける信仰の人。弟のラザロは、今日の聖書箇所にも「イエスが死者の中からよみがえらせたラザロ」(:1)と記されている証しの人です。今日もマルタは夕食の用意をし、給仕をしておりました。でももう、かつての「主よ、わたしの姉妹はわたしだけにもてなしをさせていますが、何とも思いになりませんか。手伝ってくれるようにおっしゃってください。」(ルカ10:40)と苛立ち、不平を言うマルタではありませんでした。奉仕できる感謝と喜びをもって世話するマルタの愛は、皆に真のくつろぎを与えています。

 そのとき、マリアは「純粋で非常に高価なナルドの香油を1リトラ持って来て、イエスの足に塗り、自分の髪でその足をぬぐった。」(:3)のです。イスカリオテのユダが「この香油を300デナリオンで売って」(:5)といっているように、300グラムそこそこが、当時の労働者の1年分の収入にも当たる高価な香油です。マルコによると、マリアはこの「香油の入った石膏の壷を持って来て、それを壊し、香油をイエスの頭に注ぎかけた。」(マルコ14:3)と記しているように、惜しげもなく全てをイエス様に注いだのです。そして、頭から滴り落ちた香油は足にまで及びました。マリアはそれを自分の髪でぬぐったのです。ユダと一緒に、「何という、無駄使い」と多くの人は思うでしょう。その場に居たら、私も同じように思ったかもしれません。でもヨハネは「家は香油の香りでいっぱいになった。」(:3)と好意的に書いています。でもそれは、「なぜ、この香油を300デナリオンで売って、貧しい人々に施さなかったのか」(:5)とユダが言ったこの時ではありません。イエス様が十字架にかかって死に、ユダが自らの命を絶った後、ユダが「盗人であって、金入れを預かっていながら、その中身をごまかしていたからである。」(:6)と判明したからです。香りは鼻から吸いますが、良い香りか、悪い香りかを判断するのは脳です。脳が他のことに気を取られているなら、香りは感じません。マリアの行為はイエス様が言われたとおり、「記念として語り伝えられる」(マルコ14:9) 素晴らしい行為だったのだと分かった時、ナルドの香りも家に、そして人々の心に、良き愛の香りとして満ちたのです。

 確かに、イエス様の死んだ日は安息日の前日で、安息日に入る夕暮れが近づいていました。12弟子たちではなく、秘かに弟子になっていたアリマタヤのヨセフが、急いで遺体を取り降ろし、自分のために用意していた新しい墓に葬りました。葬りに於いて、何もなせなかったと心残りの弟子や、イエス様につき従って来た女性たちは、安息日明けを心待ちにしていました。そして「婦人たちは、…週の初めの日の明け方早く、準備しておいた香料を持って墓に行った。」(ルカ24:1)のです。もちろん香料を塗って、葬りの正装をするためです。でも、イエス様は復活して墓には居られませんでした。しかし、その墓には香油の香りが満ちていました。その時、マリアの香油注ぎについて、イエス様が言われた「この人のするままにさせておきなさい。わたしの葬りの日のために、それを取って置いたのだから。」(:7)の言葉を、人々はやっと理解したのです。嗅覚を通して感じる香油の良き香りは、時と共に消えて行きます。でも、マリアのこの香油を注いだ行為は、愛の香り、信仰の香りとして人々の心に満ち、消えないものとなりました。

私はこの聖書の箇所を読むと思うのです。自分も、そして私の家も、愛と信仰の香りが、人々の心の中にいつまでも残る歩みをして行きたいと。

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