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礼拝説教要約(2016320日)

「イエス様の叫び」     聖書・マタイ福音書272757

 先週見たように、ユダヤ人にとってのイエス様の罪状は「自分を神と等しい者とした」という冒瀆罪でした。しかし、ユダヤ人たちがローマの総督に訴えた罪状は「イエスは自分をユダヤ人の王とした」との反逆罪だったのです。ここにも、ユダヤの指導者たちの、目的のためには手段を選ばない破廉恥さが表れています。彼らはイエス様を十字架刑にするためには、恥も外聞も捨てた。という以上に、神の民としての誇りも、真理も捨てたのです。ユダヤ人はローマの属国となってはいましたが、少なくとも“自分たちは神に選ばれた特別な民族なのだ。本来は自分たちが上位にあるし、そうなる日が必ず来る”との誇りだけは持ち続けていたはずなのに、イエス様を殺すためにはそれさえも捨てたのです。

 総督ピラトも、又、ローマ兵たちも、イエス様がユダヤ人の王などとは思ってもいませんでした。それで、いたずら気分でイエス様に、赤い外套と茨の冠、葦の王酌で、哀れな王としての身なりをさせたのです。それはイエス様への侮辱であると共に、ユダヤ人に対する蔑みの表現でありました。そのことにユダヤの指導者たちは気付きました。だから「祭司長たちがピラトに、『ユダヤ人の王』と書かず、『この男は「ユダヤ人の王」と自称した』と書いてください」と申し入れました。しかしピラトは「わたしが書いたものは、書いたままにしておけ」と答え、取り合おうとはしませんでした。(ヨハネ192122)

 このようにして「ユダヤ人の王」と書いた十字架の上に架けられたイエス様の肉体は、限界に達していました。十字架刑は、人によっては十字架の上で2,3日、苦しみもがきながら生き続ける人もいたそうです。日本の武士時代の十字架刑は、十字架に付けるとすぐに、槍で両脇腹から心臓を突き刺すので苦しみは少ないものでした。だからローマの十字架刑は最も残酷なものだったと言われています。しかしイエス様は十字架を担えないほど弱っていたので、6時間で生き絶えてしまいました。

 しかし、このような苦しみの中でも、イエス様の愛は最後まで人間に向けられ、その霊性は神に向かい続けていました。それが十字架上での7つの祈り、叫びとして表わされているのです。第1は、自分を殺す人々さえをも愛し通し「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです。」(ルカ23:34)との敵をさえ愛する愛の祈りです。第2は、十字架の上で信仰を告白した罪人には「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」(ルカ23:43)との救いの宣言です。第3と4は、母マリアを弟子のヨハネに託し、母には「婦人よ、御覧なさい。あなたの子です」との愛する者への心遣いであり、ヨハネには「見なさい。あなたの母です」(ヨハネ19:26,27)との配慮ある委託です。ここまでは十字架に付けられて、未だ意識のはっきりしている前半で、イエス様の目は愛する人間に向けられていました。

そして死の直前になると、イエス様の目は天の父なる神へと向いています。そして本日の「『エリ、エリ、レマ、サバクタニ。』これは、『わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか』という意味である。」(27:46)との叫びが第5番目です。多くの人はここにイエス様の絶望と敗北を見ることでしょう。確かに、肉体の痛さなどとは比較にならないほどの、心の痛みをイエス様は感じておられました。それは、“こんなにも善いことを一杯してきたのに報いられない”という絶望ではありません。イエス様はこの世での報い等、全く願っておりません。人を罪から贖い救う愛のゆえに死ぬことは、イエス様の願いであり本望です。しかしそれ故、神から見捨てられるべき人間に代わって、イエス様が神に見捨てられるのです。この痛みがどんなに激しいものであったことか。聞いている誰もの心にその痛みが伝わってくる叫びでした。だからこそこの叫びだけはイエス様の叫び声のまま「エリ、エリ、レマ、サバクタニ。」と書き記されたのです。第6は、「渇く」(ヨハネ19:28)との預言の成就の言葉です。喉の渇きは「口は渇いて素焼きのかけらとなり、舌は上顎にはり付く(詩編22:16)」ほどの激しい渇きです。しかしイエス様は「神に、命の神に、わたしの魂は渇く」(詩編42:3)と魂の渇きがあったのです。そして終わりに「成し遂げられた」(ヨハネ19:30)と言い、息を引き取られました。

 私たちはこのイエス様の叫び声を忘れてはなりません。このイエス様の叫びに私たちの心が共鳴する時、イエス様による救いの喜びがあなたの心を満たすでしょう。黙想しつつこの受難週を過ごし、復活の日を待ち望みましょう。

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