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礼拝説教要約(201636日)

「この杯を飲む」       聖書・マタイ福音書263646

満月を過ぎたばかりの月明かりの中に、10数人の人影が見えます。ゲッセマネと呼ばれているオリーブ林の中です。過越しの食事を終え、祈るために来たイエス様と12弟子たちです。イエス様はペトロとヤコブ、ヨハネの兄弟を伴って、もっと奥の方に入って行き、祈り始めました。イエス様は何を祈られたのでしょう。しばらく皆さんも黙想してみてください。

「わたしは死ぬばかりに悲しい。ここを離れず、わたしと共に目を覚ましていなさい。」(:38)とイエス様は言われました。「目を覚まして」とは、ルカが記しているように「誘惑に陥らないように祈りなさい」(ルカ22:40)ということです。そしてイエス様は彼らから少し離れた所で祈られました。

でも、イエス様の祈りについて黙想する前に、弟子たちの状況はというと、「眠っていた」のです。熟睡していたわけではありませんが、目を開けておれなかったのです。もちろん、祈りも途絶えていました。体が疲れていたからです。でもこの弟子たちの眠りは、イエス様の御苦しみを理解出来ていなかったからです。イエス様の御苦しみを共感できていなかったのです。受難節に入ったとき「祈りに心を用い、主の御苦しみを覚えましょう。」と申し上げました。でも現代はイエス様の御苦しみを覚えず、祈りを忘れたキリスト者、祈祷会の振るわない教会が多くなったと言われております。どうでしょう、私たちは? イエス様は祈ることを求めています。主の悲しみ悩みを共に悲しみ悩み、その苦しみを共にする祈りの友を求めておられます。私たちキリスト者は、主の同労者となるため祈り続けなければなりません。そうすれば、「わが名によって祈る所に、わたしも共に居る」と言われた主が、確かに祈りの輪の中に御臨在なさるでしょう。

弟子たちが眠りこけている時、イエス様は最も激しい戦いの中におられたのです。初めの人アダムとエバを惑わし、イエス様が公生涯に立たれる時にも、惑わそうと試みを仕掛けてきたサタンとの戦いです。

イエス様が悲しみもだえて祈られた原因は何でしょう。「父よ、できることなら、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。」(:39)と祈っておられます。過ぎ去らせてくださいと言われる「この杯」こそ、苦しみの原因です。預言者はこの杯を「主の手から憤りの杯を飲み、よろめかす大杯を飲み干した都よ。」(イザヤ51:17)、「わたしの手から怒りの酒の杯を取り、わたしがあなたを遣わすすべての国々にそれを飲ませよ。」(エレミヤ25:15)と言っています。罪の中にあるすべての国々、人々が受けなければならない神の怒り、裁きであります。

イエス様は今まで既に、この苦難を予告して来ました。自分がこの世に来られた使命、それは、この苦難を受けるためであることを知っておられました。人間の罪をすべて背負い、神の裁きである十字架の上で死ぬことをご存知でした。これは単に、人々に妬まれ、迫害されということではないのです。イエス様は弟子たちにかつて「体を殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、魂も体も地獄で滅ぼすことのできる方を恐れなさい。」(マタイ10:28)と教えられました。ですから、イエス様は体が鞭打たれようと、殺されようと、そんなことが怖いのではないのです。イエス様が悲しみ、苦悩なさる原因は、魂が滅ぼされること。神から見捨てられることなのです。この恐ろしさは希望のかけらも見出すことのできない、全き絶望です。この神の怒りの杯を過ぎ去らせてくださいと、苦しみもだえ、血の汗を流して祈られました。にもかかわらず、イエス様の心の中の戦いで、人間に対する愛の方が勝利したのです。だからこそ「父よ、わたしが飲まないかぎりこの杯が過ぎ去らないのでしたら、あなたの御心が行なわれますように。」(:42)と祈られたのです。それは神の憤り、裁きの杯を飲むとの最終決断でした。それは、人を愛するが故、十字架という摂理の道を歩み、使命を果たすとの勝利の祈りだったのです。だから弟子たちに「立て、行こう。」と促し、先頭に立たれたのです。

あなたはどうでしょう!弟子たちは眠りこけ、祈りを忘れました。そのため神の御心より自分の願いを優先し、保身のため、イエス様のもとから逃げ出したのです。私もその場に居たなら、この弟子たちと同じように弱い者であったでしょう。でも、幸い、イエス様の復活を知っており、世々の聖徒たちが迫害にも勝利した証しのある時代に生まれました。だから、私は主の愛と、その故の御苦しみを共有する者でありたい。今日は聖餐式です。主の体なるパンを食し、イエス様の御血と言われる杯を、信仰をもって飲み、主と共にこの道を歩みたい。

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